老い

空き期間はあるものの、
15年ほど市場に出入りしていると、
お百姓さん達の老いを目の当たりにする。
白内障などの目の病気が進んできて、
自分が売る花の色が分からない(白と薄黄緑の区別が付かない)とか、
肝臓を悪くして、作る花の種類を変えたとか、
(農薬が多い花だと、肝臓にダメージが出やすいそうで)
休みがちになっていたり、とか、
あと何年続けられるかな・・と思う人が増えてくる。
寂しい。



ぼんくら息子もいる。
お母さんは明るくて、本当に良い人なんだけど、
「育て方を間違えた息子」を最近連れてきている。
息子はおそらく私と同年代か、少し上だろう。
息子は、いつみても、お母さんがどんなに忙しそうでも、
座ったまま、携帯を見つめている。
お母さんに「領収書ぐらい書いて!」と言われて、
しぶしぶ動く・・・そんな感じで、お愛想一つあるわけでもなく、
とてもじゃないけど、この息子では、
店(といってもザラ板1枚であるが)番を任せられないだろうなぁ・・という状態。
何をどうしたら、あのお母さんからこの息子が育つのか・・と思うが、
そこは人様の事情、あえて聞くことも出来ず。。
でも、このところ、毎回息子を連れてきているのは、
きっと自分の老いと、自分が働けなくなった後の、
息子の「生計」を心配しての事だろうと思う。
今のうちから、お客さん(花屋)の顔を覚えることと、
おおよその価格をつかむこと、最低限の『仕組み」を覚えさせたい、
そんな心がかいま見える。

が、当の息子はそんな事は全く気付いていないのか、
はたまた「俺がこうなったのは、お前(母親)のせいだ」と決め込んでいるのか、
ただ、むっつりと、ぶくぶく太った体を椅子に預けて、
己の携帯を見つめている。
最低だ。




色んな人がいる。
いつか歳を取る。
母親の老いも、最近目に見える。
いつか、母を送り出す日が来るんだろうなぁ。