娘の未来。

離婚した時、実母がつぶやいた。
この子(娘)が20歳ぐらいで、一番お金がかかる頃には、
私はいないからね。
と。


ギクッとした。心底。


いや、実際あと20年ぐらいは、母はまだ生きてるかも知れない。
けれど、介護が必要な状態であったり、
いずれにせよ、‘何かあった時に頼れる存在’ではなくなってるわけで。。


いや、もちろん‘頼るつもりがある’わけではないよ。
上手く言えないけれど、精神的な部分というか、
心の奥底で、本当にどうしようもなく困った時に、
相談出来るとか、一時的にそこに避難出来るとか、
そう思える場所がある事(実際頼る事はなくても)に対する安心感?
拠り所というか・・・
そういうものが、20年後には「存在しなくなってる」、
その事実を突きつけられて、愕然とした。んだと思う。


人の命は永遠ではないことを知ってるし、
実母がいつまでも元気でいてくれるとも思っていない。
現実にこの1年で、実母はグンと老けた。
耄碌してきた、と言ってもいい。
昨日言った事を今日覚えていない事も増えた。


人は老いる。そしていつか死ぬ。
頭では分かってるし、母もそうだと理解はしている。


けれど、それを「実感する」ことは、今までなかった。
娘には確実にある未来。
私にも、たぶんあると思われる未来。
でも、それが実母にはない可能性が高い、という事実。


分かっていたけど、分かってなかった事実。


そして思った。


娘の未来は?と。


私には、母がいた。
30歳過ぎての出産だったけれど、
手助けしてもらえる「母」がいた。
姉弟もいる。


では娘は?
もし娘が30歳を過ぎて出産したとしたら、
その時私は65歳前後。
‘手助け出来る状態’だろうか?
兄弟もこのままいない可能性のほうが高い。
兄弟がいればいいってものではないし、
そもそも手助け自体、不要な状態かも知れないけれど、
「手助けしたくても出来ない」のと、
「手助け出来るけど、必要ない」のでは、やっぱり違うよね。

兄弟にしても、‘いない’よりは‘いる’ほうが良いケースのほうが世の中多いよね。
少なくとも、私に何かあった時に、同じ立場で相談出来る相手はいるんだし。
それだけでも、随分違うと思う。


娘は、私と同じような環境で子育てする事は出来ないし、
同じような環境で生きていくことは出来ない。
例えば今私が死んでも、娘は路頭に迷わない。
姉なり弟夫婦なりが何とかしてくれる。


でも、何十年か後、娘が子供を産んだ後、
娘自身には、「我が子(娘の子、私の孫)を安心して託せる相手」はいない、という事実。


私が娘に用意してあげられない環境を、
私は(自分が努力したわけでもなく)持っている。
自分は‘当たり前のように’与えられてきたのに、
それを娘には与えてあげられない。という事実。


私の我が儘さの結果がそれだ。
産めるのに、産まなかった。
まだ産めるのに、自分の人生を優先して、産めない環境を選んだ。
私が娘から奪ったものが、ここに一つあった。
天涯孤独という言葉があるけれど、
娘は私よりも、その可能性が遙かに高い。
私が37歳の今、持っているものを、
娘が同じ歳になった時には何一つ持ってない可能性があるという事実。


実母の一言を聞いたこの一年ほど、
そんな事を(ひそかにw)考えていた。
そして、では私が娘の未来の為に出来る事は?と考えてもいた。


せめて娘が将来困らないような生活能力を身につけてあげたいと切に願う。
娘が子供を産んだ後、我が子の未来について、金銭面で悩まなくても良い程度の能力を与えてあげたい、と思う。


自立出来るだけの能力、
我が子を養えるだけの能力、
更に望むなら、娘の配偶者をも養える能力。
何故か?
ヒモのような配偶者なんて要らないけれど(爆)、
娘自身の心の支えになってくれる配偶者がいて、
その配偶者が何らかの事情で外貨を稼げなかった場合、
娘にその能力があれば、「悩み」が一つ解決するから。
お金なんて夫婦どっちが稼いでもいい。
(お互いが納得して、お互い労り合って暮らせるのなら、ね。相手の生活能力「だけ」をアテにするような配偶者なら要らない)


人生は何が起こるか分からないから、
最悪の事態も考えておいて損はない。
少なくとも、男性だけが妻子を養える状態よりも、
女性(娘)も夫子を養える状態のほうが、良いに決まってる。
結婚して専業主婦でももちろんいい。
けれど、万一何かあった時には、
自分でお金を稼ぎ出せるだけの能力だけは持っていて欲しい。
それがないばっかりに、何かを諦める人生は歩んで欲しくない。
お金はお金でしかない。
お金があれば何でも叶うわけではないけれど、
お金で解決出来る問題というのは、案外沢山世の中にはある。
そしてそれを稼ぎ出せる能力というのは、
あって困るものではない。(使う使わないは別にして)



どうすればいいのかなんて分からないけれど、
切実にそう願っている。


そして同時に、出来うるなら、配偶者に恵まれ、
幸せな結婚生活を送って欲しいと願ってる。


私は娘に‘何かあった時に頼れる身内’を残せない(可能性が高い)。
だから、せめて娘と共に歩んでくれる男性と、生きて欲しいと思う。
困った時に親身になって相談に乗ってくれる相手。
心の拠り所になってくれる男性。
そういう相手と、結婚して欲しい。
巡り会えるかどうかは娘の運だけど。



もう一つ。
「出産は早いほうが良い」
最近そう思うようになった。


自分自身に関していえば、30過ぎての出産で良かったな、と思ってる。
20代、遊ぶだけ遊んだし、無茶も出来た。
その経験は、子育てする上での精神的ゆとりをもたらしてくれた。
これがもし20代前半での出産だったら、もうちょっと辛かったんじゃないかな、と思ってる。


でも。
我が子の行く末を考えると、
出産は早いほうが良い、と思った。
子供が困っていたら、助けてあげられる能力がまだあるから。


今37歳。
残された時間はあとどれぐらいか?と考える事が増えてきた。
30年、あるだろうか。
分からない。


出来れば娘自身が我が子を持ってから、死にたい。
「お母さんも、こうだったの?」と聞かれたら、
「そうだよ」と答えてあげたい。
「だから大丈夫」と伝えてあげたい。
私が母から貰ったものを、娘にもあげたい。


ま、基本的には娘の人生です。
娘の好きにすれば良いと思うので、
諸々書かれている事は、あくまでも、私の願い・・・という事で。


さぁ頑張ろう。