読感

帰還せず―残留日本兵六〇年目の証言 (新潮文庫)

帰還せず―残留日本兵六〇年目の証言 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
どうしてあなたは、日本へ帰らなかったのですか―。東南アジア各地には、あの戦争が終ったあとも、現地に留まった元兵士たちがいる。ある者はインパール作戦の敗走が、ある者はインドネシア独立軍への参加がきっかけだった。祖国のために戦い、望郷の念を抱え、それでも彼らが「帰還せず」と決断したのはなぜなのか。彼地で暮らしつづける残留兵たちの人生を追った渾身のルポルタージュ

★★★★


戦争に関するものは、結構読んでいるほうだと思いますが、
こういったルポは、実は初めて。
「帰らなかった人達」がいるのは(知識として)知っていたけど、
不思議と掘り下げて考えたことも、調べようと思ったこともなく。
とても興味深い一冊でした。


戦争を知らない世代である私が、戦争について知ろうとすると、
「戦争について書かれた本」を探すことになります。
つまり、「何か起きた出来事」について書かれた本なのですね。
虐殺があった、空襲にあった、戦闘機乗りであれば、
いかにして戦ったか、どう思ったか、どう動いたか。
立場はどうあれ、「起きた出来事」について書かれているものが圧倒的で、
色んな立場にいた人たちが、起きた出来事を語って、
そして「あの戦争はなんだったのか」が一冊の本として、記されていく。

ところが(というのは正しくないかw)、この本では、
「実戦をすることなく、終戦を迎えた兵士達」が結構出てきます。
彼らは、ここには武器もあり、食料もあり(他の戦地に比べて)、兵士達の志気も高い。
なのに終戦を迎えてしまう。
この人達の一部が日本の敗戦後、インドネシア独立運動に加わるわけですが。。

最後のほうにベトナム戦争あたりに関する話も出てきます。
敗戦で残った兵士が、ここらへんにも絡んでくる。
あぁつながってるんだなぁ・・と。
当たり前だけど、歴史って点ではなくて線なんだよね。
学校で習う歴史は、線ではなくて点になってる事が多いから、
いまだに「あ、これとそれがこう繋がるのか・・」とはっとすることがあります。