読感


福音の少年 (角川文庫)

福音の少年 (角川文庫)

★★★★


久々に一気読みしてしまった。
この人は人を引き込むのが上手い。
不思議な感覚。


小説を数多く読んでいくと、
「未完」の作品に出会う。
何となく尻すぼみだったり、結論が述べられてなかったり、
沢山の「なぜ」を残したまま、終わってしまったり。
ぷつり と、途切れるように小説が終わってしまう。
そして、何かが、またはその多くが未消化のまま、自分の中に残る。

小説に引き込まれれば、引き込まれるほど、
その突然の 幕切れに取り残されて、戸惑う。


昔は苦手だった。
意図的に断ち切られた物語は、
未消化のまま読み手の心に長く留まる。
そういうものを、自分の中に留めておくことが出来なかった。
今はちょっと違う。
終章のない小説も良いのではないだろうか。
それもまた読書の楽しみの一つ。